たくさんの拍手、ありがとうございました。
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今後、SSとしてちょっぴり変えてアップすることもあるかもしれません。
その場合は、ここから削除致します。ご了承ください。
……って、そんなたいしたものじゃナイんですが。(汗
少しでも楽しんでくだされば、これ幸い!
◆◆◆
「…任務、失敗、だぞ、と」
「…………ああ」
どんな任務でもこなす。それがタークスなのに。
荒野で見失った二人。脱走した実験サンプル。
彼らを捕獲するのが、任務のはずだった。あくまでもサンプルの捕獲。保護ではなく。
けれど命令は、必ず生きたまま、とのことだった。
軍のヤツらが狂った科学者や無能な上司に命ぜられるままに、考えなしに二人を始末してしまう前に。この広い荒野で、たった二人の人間を、探し出さなければならなかったのに。
先程まで晴れていた空に、灰色の雲が立ち込める。
眩しいくらいの青が覆い隠され、ポツリポツリと降りだした雨は、大地に滲んだ赤黒い血を洗い流していく。
先程までヒトが倒れていたであろう窪み。それも、流された血と一緒にこの雨が洗い流してしまえば、そこには『彼』がいた証など綺麗に消えてなくなってしまう。
「そーいえば、サンプルはもう一人いたはず、だよな?」
「……ああ。が、この辺りに痕跡はない」
「逃げ切ったのか、軍のヤツらがおさえたのか」
「……運が良ければ、生きているだろう」
「重度の魔光中毒だって聞いたけどな、と」
「……そいつを抱えてここまで来た……」
なんて遠い旅路だったのだろう。
ニブルヘイムから追われ戦いやって来た。丘の向こうはミッドガル。
もう少し。あと少しで、『彼』は彼のことをずっと待っていた人に、会えるはずだったのに。
雲間から差す光が、丘から見えるミッドガルに降り注ぐ。
風が吹けばやがて雲は流れ、また青い空が見えるだろう。
それは多分、怖くないこと。
丘に背を向けヘリに乗り込む。
ミッドガルに続く荒野に小さな影を見つけたのは、ただの偶然。
ふらふらとよろめくように、けれど確実に進む人影。それが誰かなんてこの距離じゃ分からないし、確認したわけじゃないけれど。
「あぁ、そーいや、あいつは運がいいヤツだった。……ツォンさんと違って」
「…………」
「生き残ったもう一人も、ヤツの運のよさをおすそ分けしてもらってるかもな、と」
「………あぁ」
『彼』が生きた証は、剣と共にミッドガルに向かっている。夢と誇りを抱えて。
レノとルードを乗せたヘリは、まるで人影になど気付かなかったかのように止まることなく、ミッドガルへと飛び立った。
「任務は、失敗だぞ、と」
「……あぁ。間に合わなかった上、もう一方のサンプルも、見失った」
どんな任務でもこなす。それがタークスだけど。
「じゃ、帰りますか、と」
「………ツォンさんに報告だ」
雲は流れて、光と共に現れた空は、とても綺麗な青だった。
きっと、怖くない。
◆◆◆
もしもーし
空から降ってくるのは、羽根を持つ天使……というわけではないようだ。
少なくともエアリスにとっては、空から降ってくるのはいつもわけありな少年ばかり。
まぁ、いつも、といったって、そうしょっちゅう起こるわけじゃない。
数えてみればたった二度。
それでも、短い人生の中ですでに二度、空から降って来た人に声をかけたことがあるのは、果たして自慢になるのやら。
もしもーし
自分よりちょっぴりだけ若そうな少年は、綺麗なチョコボ色の髪で、閉じられた目元をよく見ると、なんだか睫毛も長そうである。
あらあら、ずいぶんかわいらしい子が降ってきたものね。
なんて思いながら、その瞳が開かれるのを待っていた。
微かに痙攣してゆっくりと開かれた彼の瞳の色は、とても綺麗な空の色でした。
もしもーし
ねえ、キミ、ひょっとしてソルジャー?
じゃあ、知ってるかも。『彼』のことを…。
ねえ、聞いたことない?
教えて欲しいの。
ねえ、『彼』は今、どこに……
ううん、教えて欲しいの。
ねえ、『彼』は今、生きているのか。
空、を、綺麗、だと思う。
今は。
どこまでも遠く澄み渡る空を見上げると、ひょっとしたら『彼』も同じこの青い空の下にいるかもと思えるから。
怖くないよ。
もしもーし
もしもーし
もっと、いっしょに、いたいです。
◆◆◆
『彼女』がいなくなった。
そしてもう二度と、戻ることはない。
サクッ、サクッ、と、一歩進むたびにそんな乾いた音を立てるくせに、足からジワジワと染み入るような水気。真っ白い空間を、クラウドは夢だと認識した。
それにしても、寒い。
指先からかじかむようなこの寒さ。けれど、決して馴染みがないわけじゃない。
ここは、冬のニブル山か。
それにしては、少し地形がおかしいし、ニブル山よりも更に寒さが厳しい気がする。
一体、どこの山だろう。
そう、自分はここが山だと認識している。
シンシンと降り積もった雪が一面を覆う真っ白な山。
そこを一歩一歩踏みしめるように先を急ぐ自分と仲間たち。
目の前に現れたモンスター。
けれど、それを倒したのは自分ではない。
大き目の剣、バスターソードを振り回し、鮮やかに敵を仕留めて見せたのは、黒髪の『彼』。
次の瞬間、『彼』の背後に現れた敵を、自分は、銃で攻撃していた。
そう、この手に馴染むのは、巨大なバスターソードではなく、どこにでもある、一般兵なら馴染み深い神羅製の銃だ。
『彼』が振り返り、言った。
「ありがとな、クラウド!」
真っ白な世界で、二カッと笑った『彼』は、黒髪に黒服で、魔晄を帯びたその瞳だけが、怖いくらい青く輝いていた。
うっすらと不思議な光を帯びたそれを、俺は、憧れと、ほんの少しの羨ましさと共に見ていた。
眩しい太陽を見たときみたいに、目を細めて…。
ぱちぱちと暖炉の音で目が覚める。
アイシクルロッジの宿の室温は、上着などいらぬ程暖かく保たれていた。
仲間の声を聞き流しながら窓から外を見ると、一面の雪景色。そこに懐かしさを覚える理由を、今のクラウドは知らない。
真っ白な雪の中に、真っ黒な誰かを見たような気がして、目を細めるけれど、太陽が反射して眩しいだけで、そこに『彼』はいなかった。
『彼』?誰のことだ、それは?
チョコボ色の髪を降って、クラウドは雪から目を背けた。
白い雪も、黒い髪も、青く輝く瞳も。
どれもとても大切な記憶の欠片であるはずなのに、『彼』の思い出はクラウドの奥深く眠ったままで、その名前すら今は、思い出すこともなく。
ただ、『彼女』がいなくなってから、『彼』の夢をよく見るようになった。
目覚めたらすぐに忘れてしまう儚い夢。
呼ばれるままに、先を急ぐけれど、何を目指しているのか、どこに辿り着くのか。
何も分からぬ自分は、ただの人形なのか。
それでも、クラウドは、必死で生きねばならないのだ。その理由も知らず…。
声が聞こえる。
記憶の中で、声が……
俺の分まで、生きろ……
◆◆◆
不思議な男だと思う。『彼』は……。
ツォンは目の前の男にさりげなく観察する視線を向けるが、結局出てきた答えが、不思議、などというタークスとは思えないような一言で、我ながらゲッソリとしてしまう。
「ヤのつく職業に見えますね」
ツォン「……893(ウータイ系マフィア)だと言いたいのか?」
「はっはっはっ!いや、薬剤師さん」
ツォン「…紛らわしい言い方をするな」
のほほんと笑う『彼』にやはり思うのだ。
不思議な男だと…。
『彼』、ザックスは…。
◆◆◆
羽根の生えた人型。それを人は、天使と呼ぶ。
天の使い。
シスネは、古い文献からその姿を描いたページを見つめた。
尊き神の使い。
姿は人と変わらず……否、普通の人間よりも美しくより完璧な容姿を持ち、その肩甲骨から生えた白い羽根をふるわせて空を飛び、天の声を地へと届ける存在。
ふっ…と溜息が零れる。
別に天使なのかそうじゃないのか、そんなことはどうでもいい。
でも、羽根が生えた人間がモンスターかと聞かれたら、そんなことはない、と即答するだろう。
空を飛びたい。そう思うことは異常ではないはずだ。
ヘリではなく、飛行船でもなく、己が力で、この青い空を飛んでみたい。
真っ白い羽根を羨むことこそあれ、疎むなどと、シスネには考えもつかないことだ。
美しいと思う。
羽根が生えた人間を。
◆◆◆
「またあの子犬か?」
静かに響く低音に、ほんの僅かからかいを含ませて問うセフィロスに、アンジールは軽く肩をすくめてみせた。
「しつけは、最初が肝心だ」
「それで連日のしつけ教室か」
ソルジャーのトレーニングルームも、この二人にかかれば、『かわいい子犬の初めてのしつけ教室~』な有様である。
「あいつは無駄にエネルギーが有り余ってるからな」
元気の良過ぎる子犬は、広い場所でしっかりと運動をさせましょう。運動不足でパワーが有り余っている状態では落ち着くことが出来ず、飼い主の言う事をちゃんと聞けません。
「ソルジャーとして使えるのか?」
「あぁ、やれば出来るヤツさ、あいつは」
日常ではやんちゃな面が目立つ子も、飼い主がじっくりしっかり根気と共にしつければ、ちゃんと言う事を理解してくれるステキなわんちゃんに育ちます。子犬の段階で諦めてはいけません。(諦めたらそこで試合終了です。by安西)
「そうだ、セフィロス」
「……なんだ?」
ふと思いついたように呼びかける友の声に、そこはかとなく嫌な予感を覚えながら返すと案の定。友は爽やかな笑顔と共に提案してきた。
「今度、あの子犬に指導してやってくれないか?」
「……飼い主はお前だろう」
「あいつはお前に、つまり『神羅の英雄』に憧れてここまで来たらしい。今も夢は英雄になることだそうだ。やんちゃなだけに俺じゃあ手を焼くこともあってな。だが、お前の言う事なら死ぬ気で吸収するだろう」
「……オレは手加減は出来ないが?」
「あぁ、それも承知の上さ。むしろ、殺す気でしごいてやってくれ」
「それは言葉通り取っても?」
「お前の容赦の無さは理解しているつもりだ。あいつは逆境に立った方が伸びるタイプだからな。それに……」
ふ、と言葉を切ったアンジールは、微かな笑みを口元に浮かべる。
「それに、しぶとく負けず嫌いな人間相手なら、お前はいい指導者になると思う。なんせ相手の力量を的確に見抜いた上で、ギリギリの所まで力を出させるからな」
「…ふん」
友の褒めてるのか貶してるのか微妙な……おそらく本人的には褒めているつもりなのであろう言葉を、軽くかわしてセフィロスは背を向けた。
「…その子犬がやる気があるというのなら、今度のミッションに同行させる」
「あぁ、頼むよ」
銀髪を翻して去っていくセフィロスの後姿を見送りながらアンジールは、さあ、なんといってあの子犬に朗報を伝えるべきかと考えていた。
神羅の英雄自らのしごきなど、中々受けられるものではない。そしてあの子犬はきっと、引きちぎれそうなほど尻尾を振って、英雄の背を追って行くだろう。
◆◆◆
ピンク色のりぼんは、幸せの証でした。
「あっ!…あ~あ、どうしよう……」
ハラリと運悪くこのタイミングで解けたリボンは食卓の上に落ち…
「ソース、ついちゃった……」
最悪!!
◆◆◆
真っ青な空。どこまでも続く空。流れる白い雲。
トラックの荷台から見上げる空は、遠い日の約束を思い出させた。
呼ばれている。声が聞こえる。
身体を、心を、まるごと包み込むような、どこか懐かしい声が。
『古代種…セトラの民はね、星の声を聞くことが出来るのよ。ほら、エアリスも、耳を澄ませてごらん』
優しい声で母さんはそう言った。
遠く近く囁くようなこの声は、星のものだと、そう教わった。
『エアリス…キミは失われて久しい民、古代種だ。人々を約束の地へと導いてくれる。星の声が、聞こえるんだろう?』
黒いスーツを着崩すことなく身に纏い、エアリスに期待するように、どこかたしなめるように、声をかけるツォン。
微かに聞こえる声が、約束の地を示す星の声だと信じていた。
『古代種…クックックッ…おもしろい実験体だ…。もし本当に星の声が聞こえるとしたら……』
嫌な笑みを浮かべて、実験体を見る冷静な観察眼を向けてきたのは宝条。
非科学的な物事を一切信じないと断言し、星の声を遺伝子による帰巣本能の一種と考えていたらしい男。古代種よりも、遠い昔、空から来た災厄に惹かれていた哀しいヒト。
古代種…セトラの民。ずっとそう言われてきた。
星の声が聞こえるだろう。
確かに、エアリスには他のヒトには聞き取れない何かが届いていた。
けれど、あの古代種の神殿で、初めて触れた古代種の思念体。それ以来、エアリスの身体を、心を、包み込む声は、今までとは比べ物にならないくらい強く、強く、響いていた。
ゴンガガを一人抜け出すことに戸惑いはなかった。
クラウドを一緒には連れて行けない。これは『古代種』であるエアリスが一人でなさねばならぬことなのだ。
ただ、ここで彼らと別れることに、全く何も感じないといったら嘘だ。
セフィロスを追う以上、彼らとはまた再び会うだろう。きっと。そう信じている。
それなのに、同時にどこかでこれが永い永い別れになるかもしれない予感もあった。
早朝に村を出てすぐ、近くの道を走るトラックに同乗させてもらう。
古代種の神殿を出て以来、何かに呼ばれているような気配が強まっている。
どこ、とはっきり分かるわけではないが、ここより北に向かうべきだと分かる。
気のいいトラックの運転手は、朝一に畑で採れた野菜を近くの村の市場に配達途中らしい。
「北の大陸に行きたいなら、ここから西の海岸線にある町まで出たらいいさ。なんならそこまで乗せてってやるよ」
彼の目指す村は、その町より大分手前のようだが、何を企むでもなく、本当に親切心のみで申し出てくれているらしい。願ってもないその提案をエアリスはありがたく受け入れた。
郊外を走る高速は、早朝のせいか他にすれ違う車もない。
助手席を勧められたが、エアリスはあえて断って、野菜の積み込まれた箱と一緒に、荷台に腰を下ろしていた。
「いくら高速で地面が平らといっても、ずっと座ってたら腰が痛くなるからな」
そう言って、気のいい運転手は、箱の上に腰を下ろすようすすめる。
「なぁーに、お嬢ちゃんの体重くらいなら、どおってことないさ」
「ありがとう」
箱越しとはいえ、野菜の上に座ることに多少の戸惑いを見せるエアリスに、助手席に敷いていた座布団を渡して運転手は豪快に笑った。
走り出した車の荷台から、離れていく村へと目を向ける。深い緑と、綺麗な水、切り立ったような崖と、壊れた魔晄炉跡。
小さく寂れた村は、それでもどこか暖かかった。互いのことを知り尽くしている村の人々。今までもずっとこの土地で暮らしてきた彼らは、これからもここで生活を続けていく。ミッドガル育ちのエアリスが経験したことのない静かで安定した暮らし。
変化のない生活は、ほんの少し退屈で、小さな集落は時々息がつまることもあるだろう。
そんな土地で、『彼』は幼少時代を過ごしたのだ。
濃い緑の匂いは生命力に溢れていて、きっとあの滝や崖でちょっと危険な遊びをしただろう。
この小さな村は、確かに『彼』には少し、小さすぎたのかもしれない。
あのひまわりみたいに笑う『彼』には。
エアリスは頭上で風に揺れているピンク色のリボンにそっと指を伸ばした。
どうしているのだろう、今頃。
元気だろうか。
あの時感じた微かな違和感。まるで彼を遠くに失ってしまったかのような…。
いいえ、けれど違うのだ。あの感触とは確かに違う。
だって、エルミナの夫の時には、ちゃんと分かった。彼が星に還ってしまったことが。
でも、5年前のあの日、柔らかな雨が降り始めたあの日、一瞬、『彼』を失ってしまったかのような、そんな衝動を感じたけれど。
けれどその後、まるで一度星に還ったはずの魂(エネルギー)が、再び身体に吸収されたかのような、そんな不思議な違和感。『彼』の魂は…記憶は、一体、誰の身体に……?
ううん。
もしかしたら、『彼』は大怪我を、それこそ死にそうな程酷い怪我を負ってしまったのかもしれない。そこで九死に一生を得た。そういうことかもしれない。
どこにいても。誰といても。
元気だと、いいな……。
トラックは、高速を快調に走り、赤い大地のコスモエリアを抜けていく。
いくつもの標識を通り過ぎ、ニブル平原とコスモエリアへの距離を示す表示が出た辺り。
トラックは微かにへこんだアスファルトを軽く撥ねて走り続ける。
ほんの一瞬のことだった。
意識にも残らないような、ほんの一瞬。
その微かな窪みこそ、かつて『彼』がつき立てたバスターソードによって出来たものだなんて、エアリスには知るゆえもなかった。
コスモエリアをこえて、やがて車を平原へと出る。
この平原を、かつて『彼』がクラウドをつれてこえたことをエアリスは知らない。
追われながらも海岸線まで来た『彼』が、何を見つめていたのか。
あの日、ミッドガルのプレート下で、空を怖いと言った少女は、果てしなく広がる空と海の元、仲間と離れる決意をし、たった一人で旅を続けている。
あれほど、怖いと思った青。
今はそれを、とても綺麗だと思っています。