「捜査の基本は現場から~、と」 奇妙な節をつけてレノは、49階のソルジャーフロアへ向かう。 マテリアルームの扉には、立ち入り禁止の黄色いテープが貼り付けられていた。 その前では兵士が二人、警備として立っている。 魔晄だらけの室内。一体どの程度危険なのだろう。 「申し訳ありませんが、立ち入りは禁止されています」 ぶらぶらした足取りだが、それでも真っ直ぐに扉に向かうレノに気付いた兵士が、2メートル先から声をかけてくる。 無論、レノがタークスであることは知っているだろう。どういった任務を受けているのかも予想しているはず。 それでも堂々とした態度で禁止してくるのは、性格がクソ真面目だからか、誰か上層部の指示なのか。はたまた、魔晄を浴びたソルジャーとは違うタークスが室内に入り勝手に中毒になることで起こる新たな問題を回避したいからか。 性格だろうと誰かさんの思惑だろうと保身のためだろうと、レノには全く関係ないが。そもそもレノとて始めから考えなしに室内に入ろうなどと考えていたわけではない。魔晄中毒になるなんてゴメンだ。 「立ち入るつもりはないぞ、と。ちょっと話が聞きたいだけだぞ、と」 相変わらずの軽い物言いで、ちらりと兵士二人に視線を走らせる。一般兵二人は、一瞬お互いを見遣って、それからレノの、着崩されたとはいえちゃんと正式なものであるタークスの制服を見て、そしてようやく窺うような視線をレノに向けた。 最初に禁止を宣言した兵士は、上に従わざるを得ない己の立場をわきまえた目で。 もう一人は、権力に対して機嫌をとるような目を向けてくる。 1:最初の兵士(兵士A)に話を聞く。 2:機嫌をとろうとしている兵士(兵士B)に話を聞く。 1:兵士Aの話 持ち場を離れさせるのが賢明とは思わなかったが、もう一人の媚びるような視線に晒されるのが不快だったため、レノは兵士を廊下の隅まで連れ出した。 「室内の状況はどんなものかな、と」 「ハッ、魔晄の汚染度は、科学部門によるとかなりのもので、ソルジャーにも少なからず影響がある程だとか」 「そいつは…かなり危険だな、と」 実際、そこまで酷いとは思ってもいなかった。兵士が強硬に立ち入りを禁ずるのも頷ける。 「どういった手順で室内が汚染されたのか、詳しく聞かせて欲しいんだぞ、と」 「ハッ!」 兵士は規則どおり頷いてみせたが、なんで今更そんなことを聞き出そうとしているのか不思議に思っているのが見て取れる。タークスなら状況を知っていて当然だろうといった所か。 実際レノは一通りのことをツォンから説明されていたが、警備にあたっている一般兵たちにどういう風に話しが伝わっているのか興味があった。なぜならそれが真実か如何かに関わらず、世間に広がるであろう情報だからだ。 「私が聞いたところでは、マテリアルームに勤務していた研究員Aが実験中に誤って、魔晄を保管していたカプセルをコントロールする機械の操作ミスを起こしたそうです。彼が退社後、異常を起こした機械がカプセルを破壊してしまい、内部の魔晄が部屋中に広がってしまったと聞きました」 つまり事件は、科学者Aの意思に関わらず起きてしまった事故、と思われているらしい。 そして危険なミスを起こしてしまった科学者は、責任を恐れて失踪中、というわけだ。 「なるほどな、と。ところで、室内からマテリアがなくなったと聞いたんだが…」 「ハッ!なんでも室内の高度の魔晄に晒されて、凝結していたはずの魔晄が溶解してしまったらしく、保管されていたマテリアは全て魔晄に戻ったそうです。そのせいで一層室内の濃度が高くなるという悪循環を起こしてしまったとか…」 この兵士はなかなか良く勉強している。おそらくソルジャー候補なのだろう。魔晄とマテリアに関する知識はちゃんと頭に入っているようだ。 だが、一見説得力のありそうな彼の説明が、真実だとは限らない。 それをこれから調べていくのがレノの仕事だ。少なくとも、彼ら一般兵がどのような説明を受けているのかは、把握することが出来た。 「分かった。警備に戻ってくれて構わないぞ、と」 背中越しに手を振って、レノはエレベーターへと向かう。 ソルジャーフロアには、他に人影はない。深夜ということを置いておいても、以前と比べ閑散としてしまっていることは否定出来ないだろう。 この冷ややかな廊下を、数時間前に白衣を纏い歩いた男は、閉じた扉の向こうが緑色に輝くことを知っていたはずだ。 兵士Aは単なる操作ミスによる事故だと思っているようだが、ツォンの話では、予めそういう風に作動するよう特別なプログラムを組まなければ、魔晄のカプセルが破壊されるようなことにはならないそうだ。 他でもない魔晄の管理は、一般兵たちが思うより慎重に厳重に行われている。例え一部の研究員、そう宝条博士などが傍若無人に危険を無視して振舞っていても、管理システム事態は、サイエンティストではなくセキュリティチームによって組まれているのだ。 魔晄は、人々の文明に恩恵をもたらしたけれど、同時にひどく扱い難い毒物でもあるのだ。その危険性も、神羅はとてもよく知っている。 むろん、その科学者も、だ。 緑の毒物を人気のない部屋にばら撒くことに、意味があるのか。 それとも目的は全く別のところにあるのか。 3:レノはエレベーターのボタンの△を押した。(科学部門の宝条に会う) 4:レノはエレベーターのボタンの▽を押した。(1階の受付で科学者Aの目撃情報を探す) 3:レノはエレベーターのボタンの△を押した。(科学部門の宝条に会う) (男の履歴。過去ニブルヘイムにいたことがある。過去ミディール付近の研究所にもいた。バノーラ関係者。) 67階は常にどこか重い空気が漂っているように思う。無論、独房なんてものがあれば自然と暗い雰囲気になるものかもしれないが。 けれどレノには、このネガティブな空気全てが一人の男を中心に渦巻いているとしか思えない。 科学部門を統括する男、宝条。実験室に彼の姿はなかったが、レノの姿を見た助手の一人が黙って上階を指差した。 実験室内のエレベーターで昇った先、猫背気味の痩せた男は、長い黒髪を無造作に纏め白衣の上に垂らしていた。 手元のボードを見ながら例によって一人ブツブツと呟いている。何かの実験記録らしい。 特に表情豊かというわけではないが、それでもその顔が不快げに歪められているのが分かる。実験結果が気に入らないらしい。 尤もそういった方面に素人であるレノからすれば、実験というのは、ある一定の状況下、もしくは与えられた刺激、によって起こる反応を観察するもので、例え実験前にその結果予測を立てていようと、更に言えばその結果を証明するための実験であったとしても、結果としての反応は単なる事実に過ぎず、その結果が自らの予測、もしくは希望していたものと違うからといって腹を立てるのは、それこそ三流の証であるとしか思えない。 腹を立てるなら、読み違えた自分に対してだろうと思うのだが、この科学者を名乗る男は、腹を立てると八つ当たりするのだ。主に実験サンプルに対して。 己の過ちを決して認めず、何か気に食わぬことがあれば、それは常に自分以外の誰か、もしくは何かのせいにしてしまう。 レノが一番苦手なタイプだ。 けれどそれをいちいち表面に出してしまうほど、レノさんも子どもではない。………多分。 「宝条博士、聞きたいことがあるんだぞ、と」 余計な挨拶などこの男に対して時間の無駄だ。レノは単刀直入に用件を切り出した。 「なんだ、タークスかね。私は今、忙しい」 尊大な口調は今に始まったことではない。レノは気にせず話し出した。 「ソルジャーフロアのマテリアルームにいた研究員が事故を起こし逃走したんだぞ、と。科学部門にも連絡は来ているはずだが…」 「それがどうかしたかね。私には関係のない話だ。後始末をするのはキミたちタークスの仕事だろう」 「元科学部門の男なんで、情報が欲しいんだぞ、と」 「ハッ、そんなことで私の時間を無駄に使おうというのかね。全くタークスというのものは…いや、それ以外の人間全て、役に立たない」 嫌味というよりも、本当にそう思い込んでいるかのように淡々と言う宝条に、ややゲンナリしつつも、レノは話を続けた。 「研究員Aは、元あんたの部下で、魔晄とマテリアに関する研究に力を入れていたらしい。まぁ、その延長でマテリアルームにスカウトされたんだろうけど、と」 宝条はうるさそうに聞いていたが、魔晄とマテリアという単語に思わず反応するのは、科学者ゆえか。 「……そういえば一人いたな。…ところで事故といっていたが、一体どういった事故だったのかな」 「……報告はいってるはずだがな、と」 「いちいち他人の報告に耳をかしている暇などないのだよ。例え聞いていたにしろ、私の興味をひかぬかぎりそれは些細な事柄に過ぎん。……そんなことはどうでもいいから、事故について説明したまえ」 「………宝条博士の貴重な時間を、些細な事柄のために割いて貰って光栄です、と。事故が起きたのは22:00前後。マテリアルーム中を、魔晄塗れにして研究員は逃走。事故は故意に起こされたようだが、理由と目的は不明。目下逃走中の研究員確保のため、情報収集に励んでいるというわけです、と」 「ふむ。部屋中を魔晄塗れ、かね」 「ソルジャーにも影響が出そうなくらいの汚染度だそうだぞ、と」 「しかし、なんのためにかね?」 どこまでもマイペースな宝条に、レノは思わず顔を引き攣らせる。 「……それを現在調査中なんだぞ、と」 「ふむ、知らないのかね。…まったくもって役に立たないな」 淡々と人を扱き下ろすのが大得意な宝条だが、本人には扱き下ろしているつもりはないのかもしれない。…だとしても余計腹が立つだけだが。 「で、その研究員に心当たりがありそうだが、詳しい情報を聞かせて欲しいんだぞ、と」 先程宝条が、『一人いた』といったのを聞き漏らすようではタークスの制服は着れない。 「魔晄とマテリア…。非常に興味深い。ニブルヘイムは魔晄の豊富な地だ。それをエネルギーとして貯蔵する方法もそれ以外も…全てはあの地から始まった」 説明というよりは独り言のように宝条は呟く。 「しかし魔晄を保管するだけなら、それ専用の容器にいれてしまえばいい。けれど研究員の一人は、あえてその容器をガラスで造っていた。わざわざそのために特別な加工を施してまでしてな。魔晄の明度で視覚的に濃度を測るという実験。フンッ。濃度測定器がある以上、不必要な実験だと思ったが。フンッ、実験というより、魔晄自体に魅入られたような男だったな」 ニブルヘイムはかつて魔晄炉第一号が設置された、いわば神羅の始まりの地とも言える場所だったが。あの地ではたくさんのことが起こりすぎた。今やその名は不吉以外の何物でもない。 魔晄に魅入られた男がニブルヘイムにいたと聞かされ、納得と同時につい顔を顰めてしまいそうになる。 「確かミディール方面の研究所にも行ったはずだ。そこでライフストリームについての研究もしていたし、そういえば、ぶつぶつ…」 でたッ!宝条お得意のぶつぶつ作戦。 「ぶつぶつ…(プロジェクトGの関係者…)」 8:研究員縁の地へ行ってみよう。(選択肢:ミディール、ニブルヘイム、バノーラ、ウータイ、カーム) 9:プロジェクトG? 4:レノはエレベーターのボタンの▽を押した。(1階の受付で科学者Aの目撃情報を探す) 2:兵士Bの話 持ち場を離れさせるのが賢明とは思わなかったが、もう一人のクソ真面目な兵士の前ではイロイロと話もし難いだろうと思い、レノは兵士を廊下の隅まで連れ出した。 「室内の状況について、何か知っているのか?、と」 「ハッ、ちょっと小耳に挟んだ程度なんですが…」 もったいぶって一度口を止めたくせに、狡賢そうな目は聞いて欲しくてたまらない!と叫んでいる。レノはうっすらと口元に笑みを浮かべて、続きを促がした。 こういう輩の話はくだらないゴシップから何やら一緒くたに吐き出されるため、半分程に聞いておいた方がいいのだが、信憑さの欠片もない話の中にこそ真実が隠されている場合もある。 何より本人が権力に媚びるためか、話したくてうずうずしている。どこで仕入れたか知らないが、面白そうな話が聞けそうだ。吐き出せるだけ吐き出させておくべきだろう。 「レノさんも聞いたことがあるかもしれませんが…」 馴れ馴れしく名前を呼んでくるのに適当に合わせて頷いてやる。 「どうも重役の間じゃ、このマテリアルームに存在意義を見出せないなんていう方もいるそうで。かといってここがつぶれちゃったら、働いている研究員は今更科学部門に戻っても居場所がないわけで。彼らの間では相当深刻な問題だったそうですよ。 科学部門もイロイロとクセのある人たちが多いみたいだし。研究分野に対するテリトリー意識みたいなのも当然あるだろうし、彼らも今更マテリア関係の研究員に来られても…といった具合で、もしマテリアルームが閉鎖されたら、研究員は解雇だって噂もありましたし。 まぁ、解雇は免れても、どこか僻地で意味もない研究に回されるだとか言われてましたね」 「なるほど。それがどう事件と関係があるのかな、と」 適当なところで話を本筋に戻さなければ、延々とゴシップに終わってしまいそうだ。 兵士はレノの軌道修正に、一人頷いてみせた。 「あくまでも噂なんですけどね…」 意味ありげに言葉を切らなくとも、彼の口からでる話の80%は噂で出来てることなんて百も承知だ。 「今回の事件も、一般に言われてるような事故じゃなく、研究員の一人が起こしたテロの一種だとか言われてるそうですよ」 「テロ、ねぇ……」 「あ、レノさん信じてませんね。でもホントなんですよ。神羅をクビになりそうでヤケになったのか、何でも最近時々名前を聞くアバランチとかいう反神羅のグループと親しくしてるみたいで。あいつらは星を救うとかなんとか言って、魔晄エネルギーに反対してるじゃないですか。その延長で、あえて室内に魔晄をばら撒くことで、その危険性を訴えるテロを起こしたんですよ!」 気がつけば話が断定的になっている。噂はこうして知ったかぶりの口によって広まるものだ。やはり信用出来ない。 が、話の中に無視出来ない要素があったのも確かだ。収穫はあった。 レノはあえて全く取り合わない仕草で、はいはい、といい加減に頷いてやった。 「分かった、分かった。新手のテロなんだな、と。分かったから、もう持ち場に戻っていいぞ、と」 軽くあしらわれて兵士は不満そうだったが、そこであえて楯突くような人間だったら、そもそも媚を売ろうとは思わないだろう。不承不承戻る兵士に背を向けて、レノはちらりと考える仕草をした。 5:さて、科学部門に話を聞くか。(科学部門の研究員に話を聞く。この場合宝条は不在。神羅屋敷にいるから) マテリアについて。研究員の性格について。 6:さて、アバランチとの関連について調べるか。(八番街でアバランチのメンバーを問い詰める) 3:レノはエレベーターのボタンの△を押した。(科学部門の宝条に会う) 4:レノはエレベーターのボタンの▽を押した。(1階の受付で科学者Aの目撃情報を探す) 灯りだけは眩しいほど灯されているが、深夜のロビーはやはり人気がない。 日中は、親しみやすいのに冷静な対応でカンパニーを訪れる様々な人々を、時には導き、時には追い返しと、作られた完璧な笑顔で対処する受付のお姉さんが座っているのに。 レノは溜息を溢す。今いるのは、夜勤についている一般兵だ。 レノの個人的な感情は置いておいて、当初の目的を果たすのならば、一般兵でも何の問題もない。 近付いて来るタークスの制服に気付き、一般兵は傍から見て分かるくらい緊張に背を伸ばした。 「お、お疲れ様です!」 「…そんなに緊張してくれなくていいんだぞ、と」 呆れたように肩を竦めてみせるが、直立不動の一般兵には効果がない。 「…ま、いいか。それより聞きたいんだが、あんたの勤務時間は何時から?」 「ハッ!!今日は、22:00から翌朝6:00までのシフトとなっております!」 「ふーん…ということは、ちょうどあいつが出た頃と重なるかな、と」 独り言めいて呟いたレノに、兵士は軽く首を傾げて見せた。 「マテリアルームの研究員が、22:00頃退社してるはずなんだがな、と」 「あっ!!」 思わずといった風に声を上げた兵士を見遣ると、彼はついうっかり出してしまった声にしまった、と首を竦めてしまっている。 「何か知ってるのかよ、と。だったら話を聞かせてほしいんだぞ、と」 レノが興味を示すと、気を取り直した兵士は、再び背筋に鉄板でもつめてんのかといった勢いで直立不動してみせた。 「ハッ!!自分が勤務に入ってすぐのことです。白衣を着たままの研究員が本を四冊と箱を抱えてエレベーターから降りてきました。挨拶のつもりで声をかけると驚かしてしまったのか、本を落としてしまったので、拾うのを手伝いました」 「箱ってのは、どういうもんだ?」 「ハッ!!シルバー色の、自分はあまり詳しくはないのですが、象が踏んでも壊れないようなミスリル製に見えました。大きさは1UOlx2UOw、高さが1UOlくらいでした」(注:1UO=アルティマニアオメガ1冊分、UOl=アルティマニアオメガ縦、UOw=アルティマニアオメガ横、1UOlx2UOw=アルティマニアオメガを横に二冊並べた縦横のサイズ) 「ミスリルねえ……。ずいぶん頑丈そうな箱だが、何が入っていたのかな、と」 「ハッ!!自分は確認しませんでした。………研究所からの持ち出しは制限されているのでしょうか?そういった命令は受けておりませんが……」 「あぁ、基本的にあんたたちが気にすることじゃないぞ、と」 「ハッ!!生憎と箱の中身は知りませんが、本のタイトルなら覚えてます!」 「一応、聞いておこうかな、と」 「ハッ!!『噴き出せライフストリーム!』、『詩集:LOVELESS』、『世界各地の七不思議』、『アップルパイの全て』、の四冊です」 「ふーん、よく覚えてたな、と」 「ハッ!!本を拾う手助けをした時、少々雑談をしました。むろん!勤務中であるので、警備に支障のない程度にです!!」 「雑談ねえ…、どんな話をしたのかな、と」 「ハッ!!自分はライフストリームを見たことがないのですが、研究員の彼は以前ミディールの近くで研究をしていたらしく、生のライフストリームの迫力はさすがだったそうです。自分はLOVELESSの舞台のファンなのでそう言うと、彼は見たことがないというので、公演中の舞台を薦めました。興味を持ったようです。それから自分は田舎の出身なんですが、どの村にも七不思議はあるもので、研究員の彼はかつて出向いたニブルヘイムの七不思議がどうしても分からなかったと言ってました。出身はもっと南の方だそうで、七不思議より寒さが気になったそうです。そういえば……」 「ん?」 「今日から久しぶりの長期休暇なので、故郷に帰ってアップルパイでも作ってみようかと言ってました」 「故郷がどこかは言ってたか?」 「ハッ!!いいえ!!南としか聞いてません」 相変わらず直立不動な兵士に軽く礼をつげ、その場を離れる。 思ったよりも収穫は多い。 8:研究員の故郷に行ってみよう。(選択肢:ミディール、ニブルヘイム、バノーラ、ウータイ、カーム) 5:箱の中身が気になるぞ、と。(おそらく研究所から持ち出したマテリアだ。科学部門にいってマテリアその他について聞いてみる) 5:さて、科学部門に話を聞くか。(科学部門の研究員に話を聞く。この場合宝条は不在。神羅屋敷にいるから) (マテリアについてと研究員の性格について) 67階と聞いて胸がワクワクしちゃうのは、神羅に夢見てる新人科学者くらいだろう。 本社勤務の経験があれば誰だって、『あ~…、67階ね……』なんて虚空を見つめながら聞かなきゃよかった~みたいな顔をするに決まってる。 レノだってそれは同じ。むしろ、ただの本社勤務の神羅サラリーマンなんかと違ってその実態(とても公には出来ない薄汚い裏事情)を知ってるため、忌避したい気持ちは人一倍なのだ。 それなのに……。これも仕事だ。仕方あるまい。 6:さて、アバランチとの関連について調べるか。(八番街でアバランチのメンバーを問い詰める) 零番街にある神羅ビルを出て、レノは軽快な足取りで石畳の上を歩く。魔晄に照らされた街は昼も夜も同じ顔をしているが、そこを歩く人の顔は明らかに違う。 噴水の見える八番街の広場へと少し猫背に、けれど大股で歩くレノは何も見ていないような顔で素早く表通りとそれ以上に薄暗い裏路地へ鋭い視線を投げかけていた。 特に意識するでもない。これは最早習慣とでもいうべき仕草だろう。 夜中でも賑わうLOVELESS通りとは逆方向、ほとんどの店がCLOSEDのサインを見せる中、ぽつりぽつりと静かに営業している店の前を通り過ぎ、人通りが全く途切れた裏通りに続く階段を足音もなく昇る。 建物の影に消える人影を目にしたが、レノは何事もなかったかのように無視した。 八番街はタークスの縄張り。 表の顔も裏の顔も知り尽くしている。まさにレノのテリトリー。放置しておいても良い程度の裏の顔は、さりげなく見て見ぬふりをする。 人が集まり暮らす以上、どこであろうともそこには表に出せない何かが出来るのは当たり前のこと。光が差せばそこに影が出来るのは当然。 プレジデントの誇るこの幻想の街ミッドガルにも、陰と陽を内包する人間が、光と影を背負い、表と裏の顔を使い分け生きている。 ちらりと見えた人影は、とりあえず現在レノには関係のない生き物だ。もしその人影がレノ仕事の邪魔、つまりは神羅カンパニーにとって目障りなった時には、それ相応の対処をするが、目下その予定はない。 建物の配置上、暗い影を落とす界隈に、ポツリと立った街灯。そのすぐ側、丁度光の輪が途切れ、闇がより一層濃くなった場所に、男は立っていた。 そこが彼のいつもの場所なのだ。 レノは何気ない足取りで近付いた。 男がアバランチと繋がりがあるのは知っていた。知っていてあえて泳がせていたのだ。 アバランチはそもそも星命学の地コスモキャニオンで結成された組織だが、規模を拡大させた現在では全てのメンバーがコスモキャニオン出身というわけではない。 更に言えば、これだけ拡大された組織の全てのメンバーが、星を救うためという大義名分に感銘を受けているわけでもない。 中には単に神羅が気に食わない者、恨みがあるもの、暴れたいだけのもの、特に理由はないが群れていたいものなど、思惑は人それぞれだ。 ここにいる男は元よりミッドガルの人間で、反神羅を謳うアバランチが神羅の足元であるミッドガル内部にメンバーを作ろうとスカウトした人材に過ぎない。 アバランチの中枢にいるわけでもなく、むしろ組織の切れ端のようなもの。ミッドガル内部でのスカウトを任されているだけの男だ。 スカウトされた理由もどうせ、田舎からミッドガルに出てきたのはいいが、ろくな仕事にありつけず、結局は夜の街で影に隠れるようにしか生きることが出来なかった。自分の人生がうまくいかなかったのを神羅のせいにしておこう。ただそれだけのことなのだろう。 「よぉ!相変わらず暗いところにいるんだな、と」 煉瓦造りの夜の街に響かない程度に低められたくせに、やけによく耳に通る声をかけられて、男は頬を引き攣らせた。 無論、タークスのことはよく知っている。アバランチに入る前から、彼らは男のことなど歯牙にもかけず、時折確認するような視線を向けるだけで通り過ぎていった。男がアバランチに入ってからも、それは変わらなかった。相変わらずただチラリと視線の端に留めるだけで、男はそのことに安心感と同時に奇妙な敗北感をも抱いていた。 反神羅の組織としては目下一番巨大であるアバランチに属しているというのに、彼らは男を拘束するでもなく、昔と同じただ街に落ちる影のように放置されている。 捕まりたいわけでも痛い目にあいたいわけでもなく、ただ巨大な組織に属することで得られる自己肯定と、ちゃちなプライドを満足させるためだけにスカウトに乗っただけで、命の限り戦うなんて気持ちは欠片もないのだから、男はやはりただの影だった。タークスはそれを正確に見抜いていた。 そして男はタークスが自分を軽視しているという劣等感を逆手に、隠れるでもなく、居場所を変えるでもなく、以前と同じ様に街の片隅で只の影のように生きてきたのだ。 どこまでもグルグルと回るスパイラル。状況や身分は変われど、自分が変わらなければ抜け出すことは決して出来ない。レノの一言はその男の傷口をイタズラするような軽い調子で突っついて見せた。 「出て来いよ。ちょいと聞きたいことがあるんだぞ、と」 三歩踏み出せば男は、街灯が落とすスポットライトのような丸い光の中に出る。 レノ自身は、ちょうど顔の半分が光を受けていたが、残りの半分と身体は闇に沈んだまま。にやりと口元が笑みを浮かべているのが半分見える。 男は動けなかった。光が邪魔で、レノの身体、腕が武器を握っているのかさえ見えない。 動かず答えぬ男の様子に頓着せず、レノはその位置で止まったまま続けた。 「探してる人間がいるんだぞ、と」 男は明らかに緊迫した状態だというのに、どうしてここまで軽い口調で会話が出来るのだろう。 「元、神羅の社員だ。ほんの数時間前まではな、と」 何にも頓着していないような、気軽な調子のくせに、レノの一語一句を聞き逃すことが出来ない。面白がっているような、どうでも良いと思っているような、そんな投げやりとも取れるような語り口のくせに、うっかり聞き逃すと殺されるかもしれない。レノには、男にそう思わせる何かがあった。 「マテリアルームで働いていた研究員だ。何か知らないかな?、と」 知りません、とは言えなかった。絶対に。 「あ、あの、マテリアを作る技術だとかナントカをしていた男のことなら、し、知ってます……」 丁寧語でどもりながらの返答に、レノはうんうんと何ともうそ臭い親しみを込めた相づちで先を促がした。 「め、珍しいマテリアを持ってるとか言って……と、取り引きを……」 「へえ、どこで、誰と、いつ、取り引きをするのかな、と」 「く、詳しいことは、し、知らないんです、ホントに!!あ、八番街の店だって言ってました!ホントです!それだけしか!!」 これ以上は聞き出せないと素早く判断すると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべたまま、レノは焦る男に背を向けた。 7:男の言葉を信じてLOVELESS通りの店を当たってみる。 4:信じられないので一度本社に帰る。(1階の受付で科学者Aの目撃情報を探す) 最初にあったのは、消えない光。決して衰えることのない輝き。 クリスタルは六日で世界を造り、七日目を休日とした。 そして八日目に、生と死を司る永劫の流れ、ライフストリームを張り巡らせたのだ。
 
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